…君の名を呼べば、気づいてくれる…?



−−−−もう、手遅れ。





「カイメイで『ごみばこ』」





それはある日の昼下がりのこと、青い髪のボーカロイドのお話。


僕はひとり賑やかな街中を歩いていた。
「やっぱり最後はハーゲンダッツっ」
スーパーの袋にはアイスの山…目当てのモノを手中に収め、歌声も足取りも軽やかに帰路を辿る所だった。

家に着いたらまずは何を食べようかな、食後のデザートにはハーゲンダッツを食べよう…皆で。なんてちょっと先の予定を妄想しながら。
大好きな皆、大切な家族。
素直で可愛い妹や悪戯っ子だけど憎めない双子。

それから、いちばん大好きなひと。


「めーちゃん。」


しっかり者の皆のお姉さん。
僕にとって、誰よりも大切で、誰よりも可愛い女の子。

可愛いものは似合わない、ガラじゃないなんて強がるけど、そんなことないのに。


例えば、この前一緒に買い物に行った時に見た、白い可愛い花がいっぱい咲いたついた個数限定の首飾りとか…めーちゃんは否定してたけど、僕はぜったい似合うと思う。
誰よりもいちばんメイコが好きな僕が言うんだから間違いないよ。

…うん。決めた。

僕は来た道を引き返す。
大好きなひとにプレゼントを買うために。





めーちゃん、喜んでくれるかな?

「ありがとうございましたーまたお越しくださいませ!」

女の子ばかりの店に一人で入るのはすごく勇気がいる。
あちこちから向けられる視線に、プレゼントですか?とクスクス笑いながら問いかけてくる店員さん。
それでも、めーちゃんの笑顔を思い浮かべれば耐えられた。
凄く恥ずかしかったし、財布も淋しくなった。
でも、心は凄くぽかぽかしてた。
限定物の最後の一個は無事に手にいれられたのだから
手に持ったピンクの水玉の包装紙と白いリボン。
それをもう一度撫でてからそっと鞄の中に仕舞った。



早く。早く帰ろう。
めーちゃん、どんな顔するかな?

喜んでくれると良いな。


大事な大事なプレゼント…大事な。



どんっ。


後ろから誰かが勢い良くぶつかってくる。
勢いに負けて一瞬よろけた。

「危ないなぁ、気を付けてよ、ね…」

…感じる違和感。なんだっけ。


マフラーはしてる、うん。
左手にはアイスがいっぱい。
右手にはカ…バンがないっ!?



−−−…っメイコへのプレゼントっ!!



『お兄ちゃん。街に行くの?』
ミクとの会話が甦る。
『今街でひったくりが増えてるらしいから気を付けた方がいいよ。お金だけ抜いて後は全部捨てちゃうんだって…ごみばこに』
酷いことするなあと他人事のように思ってたけど、自分が盗られたら話は別だ。
お金だけ返ってきても仕方ない…プレゼントが捨てられる前に!



危ないから、と立入禁止になっているごみばこ周辺。
僕が辿り着いた時には帽子を深く被った犯人と、そいつを取り抑える警備員の姿。


「あ、被害者の方ですか!私が配属されたからにはもう大丈夫ですよ。鞄は一歩間に合いませんでしたが、財布はこちらに…」

警備員が見慣れた財布を差し出すと、僕はせめて笑った。
笑おうと、した。

でも、笑えなかった。
ショックで頭がぼうっとして、しっかり握っていた袋が手を滑り落ちる。
どうしてもう少し早く来てくれなかったのかな。



せっかくのプレゼントだったのに。





いや、まだ。








−−−−諦めてたまるか…っ!






「お兄さん、どうした…って、おい!そっちはごみばこ…!」

危ないのは知ってる。
もう戻ってこれないかもしれないことも。


でも。


僕はごみばこと呼ばれる穴へと飛び込む。
メイコがあのネックレスをつけて微笑む姿を支えにして。









「お兄ちゃん遅いね」
「アイスに夢中になってんだけじゃないの?」
「カイト兄ならありえるよな」

「何、やってるのよ…バカイト…」












くしゃくしゃと音がなって。



ほら、何もない。










サルベージ編に続く。





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と言うことでカイメイでごみばこ編でした。
めーちゃん主体のサルベージは今一生懸命携帯に打ち込んでいます(笑)

個人的な設定としてはボーカロイドは皆ひとつの家に住んでいて、亜種は亜種でマンションかなんかで纏まって住んでて、がくぽ様はご近所の和風なお屋敷に住んでる感じ。
ルカ様は最近ボカロ家に引っ越してきた所かな?

家=フォルダ的なイメージで、お買い物だってネットショッピング?
万引きとか犯罪者とかはウィルスとかスパムウェアで、警備員=セキュリティソフトとかかな。

それをもっと表に出して書ければ良かったんだけどなー…しょんぼり。