ひなちゃん、とわたしに呼びかける声がして。
ふりむくとそこには、だいすきな笑顔があった。





ひなちゃんと呼ぶ声がすきだと思った。
呼び方が、声がすきだと。
そしてそれはいつしか、その声の持ち主がすき、に変わっていた。


「…ひなちゃん?」

ぼんやりとそんな事を考えてたら、今度はクスクス笑いもセットになってた。


「あの夏の、コンクールのことをかんがえてました」


何年たっても忘れられない、あの夏のこと。
あの夏がなければ、アンサンブルを組んでなければきっと彼のことは軽くて面倒見の良い先輩、止まりだっただろう。
医者を目指す彼との関わりもなくなってしまっただろう。

そうならなかったのが嬉しくて。


そんな考えが顔に出ていたのだろう、気がつくとわたしは大地先輩の腕の中にいた。



「俺を好きになってくれてありがとう、ひなちゃん」


ほしいことばを、ごく自然にくれる大地先輩。
いとしい、って感情が溢れ出して止まらない。
何年たっても変わらない甘い発作はきっとこれからもずっと治らない。
大地先輩が医者になったって、どんなに腕を磨いたって治せない、幸せな発作。
すき、すき、だいすき。


溢れ出す思いを伝えるように、わたしは自然と広くて頼もしい胸に身体を預けて。


「大地先輩、大好きです。これからもずーっと一緒にいさせてくださいね」






----------

夏の大会からX年後のお話。大地先輩は医学生か院生ってところかな?
本当なら「大地さん」「かなで」って呼び合ってると思うけど、個人的に大地先輩が「ひなちゃん」と呼ぶのが好きなのでひなちゃんで。
そもそもひなちゃんと呼ばせたいからこのSSSを妄想したとも言えたり。

オチもなく終わるよ!