8月26日。
ファイナルが終わって。
わたしたちはとうとう律くんがずっと追って来た夢を叶える事ができた。
銀色のカップを部室に置く事…それはいつの間にか皆の夢になってて。
響也も最初は全然興味なさそうだったのに、すっごく嬉しそうな顔して笑ってて。
ハルくんも、律くんも、…大地先輩も。
皆でやり遂げたんだ!ってわたしもじわじわと嬉しくなってきて、笑った。

その日の夜は優勝おめでとうパーティになった。
パーティには星奏のアンサンブルメンバーや、至誠館の皆さん、神南の皆さんに天音の皆さんまで来てくれて、ニアがいつもみたいにカメラ持ってて、にぎやかで楽しくて。
ドレスを来てるわたしはやっぱり目立つみたいで、気がつくと誰かがわたしのそばにいた。

どうしよう…今のこの状況じゃあ人を捜す事もできない。
本当はこの喜びを一緒に感じたいひとがいる。
でも、ちょっと離れた所にいるから声を掛けるのも不自然だし。
「あの、あの小日向さん!おれ、お話したいことが…!」
あの人の事を探していたら、七海くんに声を掛けられて。
何か一生懸命話してくれてるみたいなんだけど、集中できてない。
「……小日向さん?」
「え、あ、ごめんなさい、七海くん!」
「…いえ、いいんです。
 小日向さん、おれ…小日向さんに会えて良かったと思います。
 小日向さんはおれのチェロの恩人で…あなたのおかげでおれはこうして、ファイナルで演奏出来ました。
 おれは…小日向さん、あなたの事が好きです」
七海くんはまっすぐわたしの顔をみて、まっすぐな言葉を向けてくれるけれど。
…わたしは、何も言えなかった。ごめんなさいもありがとうも言えなくって、ただ彼と視線を絡める事しか出来なくって。
そしてそんなわたしを見て、七海くんは笑顔を浮かべてくれた。
「解ってます、小日向さん…おれは、あなたを見ていたから解ります。
 …小日向さんは、ずっとあの人を…副部長さんを、見ていましたから…」
七海くんは笑顔を浮かべてそう言ってくれたけど、わたしはその言葉にほっぺがあつくなるのを感じた。
「え、え、あ、あの、あのあのなな、みく、ん…!」
わたわたしているわたしを見て、七海くんはくすりと笑顔を浮かべた。
優しいけれどちょっと悲しそうな笑顔。
おしあわせに。ありがとうございました、なんて七海くんと握手を交わして。

気がつくとさっきまでいた大地先輩の姿はなかった。


至誠館と神南の皆さんが各自の地元へと帰って。
天音の人たちとはすれ違うことくらいしかなくなって。
1日ずっと一緒にいたアンサンブルメンバーとは数分立ち話をする程度になって。

…大地先輩は、受験勉強に本腰を入れ始めて。



わたしの周りは一気に静かになった。






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以上、2話でした。ひなちゃん目線です。
こうやってUPしてみるとあれ、2話も短いな…。連載書いても文章量は多かったり少なかったりする訳ですよ。うーん…ムラが有るなぁ。

連載も適当にこうして続けて行けたらいいなあ…と思いつつ。