御注意願います! このSSは郁月小説ではありません。 完全自己満足です。 以下注意書きをよくよくご確認の上、問題なければ続きへお進み下さいね。 ●琥太郎HAPPY ED後の郁のお話です。 ●月子も琥太郎も出て来ません。 ●なんかオリキャラ(女)出て来ます。出しゃばってます。 ●琥太郎ルートの郁は本当に良い男だと思うんです。 大丈夫な方は続きからどぞ! 恋愛なんて、退屈な時間を埋める為のゲームだなんて強がっていた僕に。 もっと別の意味が有るかもしれないなんて、思う日が来るなんて…思いもしなかったんだ。 食堂でランチを取っているとメールが一通。 送信者は…「月子ちゃん」。 教育実習先で出会った彼女とは今でも時々こうしてメールをする仲になった。 クラスでこんなことが有ったとか、今度生徒会で、それから弓道部で、と他愛のない会話に混じって話題に上がる、琥太にぃの話。 彼女は、学園の保健医である琥太にぃと恋人同士になって早数ヶ月。 きっと校内では話せないのだろう恋愛話に付き合う時間が、案外僕は嫌いじゃない事に気づく。 勿論、仮にも将来教師になろうと思っているかもしれない僕が、教師としてはモラルに反する恋を表立って応援してはいけないことかもしれないけれど。 大切な兄貴分の、ようやく手を伸ばした幸せを、祈る事くらいは許されるかな、って、そう思う。 ……僕も存外、ロマンチストになったものだ。 そんな事を考えながら彼女へのメールを返し、ぱくん、と携帯を閉じた。 そんな折、水嶋?と僕を呼ぶ声に振り返る。 そこにはいくつかの同じ講義を取っている、いわゆる学友に分類されるだろう女の子が立っていた。 僕の事を水嶋と呼び、他の女の子達と違って僕に恋を押し付けない彼女は、一緒に居て楽な友人のひとりだ。 「まだのんびりご飯食べてるの?そろそろ移動しないと次の授業間に合わないんじゃない?」 そう言う彼女は手にトレイを持っていて、どうやら彼女のランチタイムは終わったらしい。 その声に時計を見れば、確かに次の授業が始まるまではそこまで猶予はない。 プレートにかろうじて残っていた最後のパスタを口に放り込んで、お茶で口を直し立ち上がる。 「そうだね、君に声をかけてもらえて助かったよ」 そう言って歩き出す僕に、やれやれとため息をつきながらもついてくる彼女。 「水嶋って本当、マイペースだよね」 「良く言われるよ」 振り向きざまくすりと笑いながらそう言い捨てれば、彼女のため息がさらに深いものになった事に気付いた。 そう、解っていてやっている事。 姉さんを失くした僕の世界に意味を見出せなくなって。 ただ孤独を埋めるために人と関わりを持っていた僕にとって、姉さん以外の人間なんかどうでも良かった。 そんな僕が周りからどう見られるかなんて…解っているんだ。 今は少し、そんな自分に、少しだけ後悔している。 「水嶋、ため息つきたいのは私なんだけど」 どうやら無意識のうちにため息をついていたらしい。 「あぁごめんね。別に君のことじゃないんだけど、気に障ったなら謝るよ」 そう言ってふと彼女に視線を戻すと、彼女は妙なものを見たような目で僕を見ていた。 目を丸くして、ぽかんと口を開けていて、ええ?とでも言いたそうな顔。 「…あのさ、君の表情のほうが失礼なんじゃないかな?何、僕の顔に何かついてる?」 僕の言葉にはっとなって慌てて表情を正すけど、ちょっと遅いよね。 ねえ、と追い討ちをかけてやると、観念したように両手をあげる彼女。よし、僕の勝ち。 「水嶋さ、マイペースなのは変わらないけど…なんか変わったよね」 彼女の言葉に今度は僕の目が丸くなった。 「なんて言うんだろう…今までの水嶋なら、たとえばさっきなんだけど…君には関係ない、でさっくり切り捨ててたんじゃないかな、って。 それに、最近は告白されても断ってるっていうじゃない。 あのくるもの拒まずの水嶋が、って皆大騒ぎしてるし。 なんか上手く言えないんだけど、なんか優しくなった気がして」 驚いた。でも、なんだか納得もした。 優しさが全て無駄になる訳ではないと知ったから。 悲しみの淵に沈んだ人を救い出せる、優しい手の存在を知ったから。 雨の中傘もささずにひたすら人を信じて待つ事の出来る、強くて優しい心の持ち主を知ったから。 その手は、僕にも人を信じる心を取り戻してくれた。 そして僕は、「彼女」を作る事をやめた。 一人の時間を埋める為だけの恋人なんて本当に僕を癒したり出来ない。 たださらに僕を渇かせるだけだと知ったし、また彼女たちにも不誠実だと思うようになった。 でもそんな事、素直に認めるのもなんだか面白くないから、僕はまた意地を張る。 「なあに、君。もしかして僕の事、好きになっちゃったの?」 からかうように笑いながら問いかけると、ため息混じりに馬鹿じゃないのと返される。 その言葉に少しだけほっとする。 「そうだね、そのほうがいい。…僕のことなんか好きにならないほうがいい」 思わず漏れてしまった本音。小声だったけど聞こえてしまったろうか。 何気ない動作を装って振り返ってみると、聞こえたのかどうかは解らないけれど軽く首を傾げて見せるから、僕もそ知らぬふりでなんでもないよと首を振った。 「でも、今の水嶋なら悪くないかな」 僕が視線を前に戻してすぐ、ぽつりと彼女の声が耳に入って正直驚いたけど。 僕も君なら悪くないかな、って心の中で言い返して、そのまま僕たちは何も言わなかった。 愛とか恋なんて言葉は薄っぺらくて、僕は信じられない。 それでもその言葉を僕に差し出してくれるのなら。 僕へと手を差し伸べてくれるのなら。 その手を、今度は信じてみようか。 僕にも、この暗い世界から引きずり出してくれる優しい手があるのなら。 ------------ 郁とだれか(と琥月)。 琥太にぃルートの郁が男前過ぎて惚れた。 琥月ルートの郁が幸せになって欲しいと真剣に祈っています。 |