お誕生日に何か欲しいものはありますか?の言葉に。
年甲斐なくも、俺らしくもなくも、心が 躍った。





「欲しいもの、か」

と言われても、正直俺にとっていちばんのプレゼントはもう俺の手の内にある。
一度は遠ざけて、何度も諦めようとして、それでもこいつは結局俺の傍から離れてくれなかった。
お子様だと思っていたのに、だからこそまっすぐに俺の目を見て。
お子様の癖に、俺を包む華奢な腕は温かくて優しくて、強い。
いとおしくて仕方ない。
どうか俺に捕まってくれるなと思いながら実は囚われていたのは俺の方だった。
もう、なくては生きていけない存在…大切な、俺の最愛のひと。

「そう、せっかくのお祝いだもん!琥太郎さん、何かないんですか?」
こてん、と首を傾げて見せる彼女。
多分、こいつの存在がどれだけ俺を支えてくれてるのか、当の本人であるこいつはちっとも解っていないんだろう。
おまえさえ居てくれれば、俺はなにも望まないで生きられると言うのに。
だから、この幸せを噛み締めたくて、ひとつ悪戯を仕掛けてみる。
俺は月子の手を取り引き寄せるとそのまま腕の中に閉じ込めて。
「え、…?」
展開についていけないのか、ほうけた声をひとつ上げるのみの月子に笑みが零れる。
これからのこいつの反応を想定して、閉じ込める腕に力を入れて逃げられないように。
そうして、そっと耳元に口を寄せ。

「そうだな。…あえて言うなら、おまえが欲しい」

息を吹き込むように耳元に言葉を流し込むと、月子は大げさに肩を跳ねさせて。
どんな顔をしているか顔を覗き込もうとすると全力で抵抗してくるから、片手で身体を拘束したまま、顎を持ち上げてやる。
真っ赤で、それでも流されまいとせめてもの抵抗のつもりか潤んだ瞳で睨んでくる。
そんな顔をしても可愛いだけだと散々言っているのにな。
こいつが素直にならないからお仕置き、と自分に言い訳をして、月子の唇に俺の唇を触れさせる。
ちゅ、とわざとリップノイズを立ててやると、更に顔が熱くなって思わず口の端がつり上がる。
「…っ!」
俺の笑顔に再度目つきをキツくすると、顎を捕えていた俺の手を振り払って俺の肩口に顔を伏せた。
見られているのが恥ずかしいだけ、俺を拒んでいる訳ではない事が手に取れて、何だかくすぐったくて笑ってしまう。
それが聞こえたのかぎゅっと服を強く握るから、なだめるように後頭部をぽんぽんと叩く。
「俺の欲しいもの、用意してくれるんだろう?」
「…、…っも、もう、琥太郎さんのばか!」
顔を伏せてたってこういう時の月子の表情なんか手に取るように解る。
ぽか、と力ない拳が俺の胸を数回叩いて、その小さな些細な攻撃が俺を更に幸せにしてくれるのだった。




そして、額を俺の肩に預けたままぽつりと。
「あげるもなにも、私はもうあなたのものなのに」
こんな事を言われて年甲斐も無く俺らしくもなく一晩中こいつを手放せなくなったのは…また別の話。





-----------



偽物になってしまった…琥太にぃの口調が良く解りません!
あんな綺麗な顔して、石田さんの涼やかな声をして、口調が荒いなんて好きすぎる!
そして月子ちゃんは天然なくせに煽る言葉を無意識に選んでいれば良いと思う!でもって自分の言葉に自爆して真っ赤になってれば良いと思う!